アメリカ出入国カードI-94:失くしていけない紙切れ

アメリカ出入国カードフォームI-94と言ってもピンとこないかもしれませんが、アメリカに向かう飛行機の中で渡される長方形の白い紙といえばお分かりでしょうか。ご自身のお名前とか滞在中のアドレスとか書くものです。このフォームI-94はもともとは長方形の紙ですが、アメリカに降り立ったところの入国審査で、入国用の情報フォームは切り取られて、皆さんには残りの正方形の切れ端が渡されるはずです。イメージ的にはまるで映画のチケットのように、いったんアメリカに入国してしまったら、I-94の切れ端はあまり重要ではなさそうですが、イメージとは違って実は皆さんのアメリカ滞在中の身分を証明するとても重要な紙切れなのです。

アリゾナ州政府が今年4月に不法移民取締りのために打ち出した新法では州内の移民が自身の身分を示す身分証明書を携帯していない場合にそれだけで刑法違反となり、また警察や空港カウンターなどに不法滞在に見える人々に身分証明書提示を求める権威を与えたこともがアメリカ国内どころか世界中のニュースになったのは記憶に新しいところです。これによりちょっと英語にアクセントがある人々も、町で警察官などからアメリカ人、あるいは合法的に滞在している外国人の証明を求められることもあり、もし何の証明も出来ない場合には刑務所に収容などということもありえたわけです。ただし後にこの法律はアメリカ連邦地裁より主要な条項の施行を差し止める命ずる判決が下されました。

I-94カード
I-94カード

アリゾナ州の新移民法が施行差し止めにはなったものの、この出来事をきっかけに留学生の受け入れに関わる担当者たちの間で「留学生たちの身分を正式に証明する書類」についてもう一度考え直すきっかけになったのも事実です。移民法には「学生や研究者、就労などの目的でアメリカに非移民として一時的に滞在している人々はその身分を示す書類を携帯していること」が記載されています。身分を示す書類の例として明記されているのがI-94カードなのです。I-94にはそれぞれが違う番号のアドミッションナンバーが記載されており、FやJなど学生の身分で滞在している場合にはこの番号がSEVISデーターベースにも入力されます。また同様にFやJの身分で入国した皆さんのI-94カードにはなにやら不思議なD/Sというマークが手書きで記入されているはずです。D/SとはDuration of Statusの略で皆さんのFやJとしての身分が学業が終了するDuration(期間)まで有効であるという意味です。なんらかの理由により修了する日にちが遅れたり、逆に早まることもあるので、身分が切れる日にちが明記されることなくD/Sのみが記載されているのが特徴です。このI-94カードはアメリカを出国する日まで保持する必要があり、一時アメリカを出国するときには出国する空港でI-94が取り外されます。そして再入国するときには新たにI-94カードを受け取ることになります。

アメリカで学生受け入れを担当する関係者の間ではこれまではパスポートやI-94カードなどあまりに重要な書類はオリジナルを持ち歩くことなくコピー持参でアメリカ国内は十分というアドバイスがこれまで主要でしたが、アリゾナの出来事をきっかけに、移民法に正確に沿うためには「最低でもI-94カードはオリジナルで携帯すること」という認識に変わったのが今年の流れでしょうか。ただし上記したとおり、I-94は重要な書類でもありますので失くさないように気をつけてください。失くした場合にはアメリカ国内から新たにI-94の再発行を申し込むことも可能ですが、手数料として今現在では300ドルが必要です。高いです。

I-94は重要な紙切れです。普段はパスポートにホチキスでとめておき、パスポートごと持ち歩くか、それが不安な場合にはI-94のみを取り外してカードケースなどに入れて携帯するなどの工夫をしてみてください。