アメリカ大学の規模とサポートの関係

最近アメリカのパデュー大学が日本のメディアでもずいぶん報道されました。これは今年のノーベル化学賞を受賞した日本人の根岸英一教授が働く大学であるためでした。また根岸氏と共にノーベル化学賞を受賞した鈴木章北海道大学教授も元々はこのパデュー大学で研究をした経緯があります。さてこのパデュー大学とはいったいどんな大学なのでしょう。英語ではPurdue Universityと書きます。はじめのPurは日本語表記では「パ」と発音されますが、英語の発音ではパというよりはプゥデューでしょうか。小さなウのところはウの口でアを発音する感じといえばお分かりいただけるでしょうか。

このパデュー大学はアメリカ中西部インディアナ州にある公立の大学で、学生数は39,000人以上(2009年調べ)また留学生の数も6,000人以上を抱え全米で5番目に多い留学生の数という調査も発表されました(オープンドアー2009年調べ)。パデュー大学は工学系の学部の強さで知られており、特に宇宙工学の分野では世界トップレベル。これまで多くの宇宙飛行士を輩出してきたことでも有名です。パデュー=理系というイメージが強いのですが、実は文系の専攻も幅広く出しておりここはさまざまな専攻を提供する総合大学ということになります。

留学生の間では大規模な総合大学は学生サポートが心配という声が聞かれます。今回は大学の規模とサポートについて少しお話します。回答から先にしますと、大学の規模と学生サポートの充実さは反比例するという言うわけではありません。大きな大学で留学生が多くなればなるほど、もちろん留学生に対応する職員の数は増えます。留学生を多く抱える学校であればあるほど経験も豊富であり対処方法をよく知っているということも言えます。文系の専攻のみを提供するリベラルアーツ系の大学はだいたい小規模なところが多いのですが、この場合学生数も数百人から数千人程度になります。小さな学校の利点はやはりアットホームな雰囲気ですが、留学生の数が少ない場合、逆に留学生を担当するはっきりとした部署がなかったり、あってもたった一人のスタッフで全てを取り仕切るということもあります。学生サポートの質は実際に学校のウエブサイトで留学生担当部署のホームページがあるかないか、スタッフの紹介ページや、実際に話をしてみることなどから判断する必要があります。

もう一つ、総合大学とリベラルアーツ系の違いについて。大規模な総合大学はたいていどこもスポーツチームをもちアメリカンフットボール、バスケットボール、陸上競技の強さなどでも大学をアピールします。学生はシーズン中大学キャンパスの中にあるスタジアムでこのようなスポーツ観戦に参加することができます。いわゆるアメリカのキャンパスを体験したいという方であれば、総合大学がイメージに近いのかもしれません。対するリベラルアーツ系の大学ですが、小規模の大学ということで職員と学生の距離の近さ、多くの大学が都市からは少し離れた郊外に立地する比較的のんびりとした場所にあり、その環境の良さを売りにしている大学も多く見られます。

総合大学にするかリベラルアーツなどの小規模な大学にするかは、それぞれの好みというのが結論になりますが、出来れば実際にその違いを希望学校を訪問することで体験することをお勧めします。進学先を決定する前に実際に大学を訪問するキャンパスツアーはアメリカの高校生の間では頻繁に行われいることで、どの大学のアドミッションオフィスもこのキャンパスツアーを充実させています。最近ではインターネットを通してのバーチャルツアー、またYoutubeビデオでも大学の様子を紹介していますので、キャンパスツアーが難しいという方も大学の雰囲気をインターネットから経験することもできるでしょう。U.S.カレッジコネクションでは大学訪問を実現させるお手伝いもしておりますので、興味のある方はぜひお問い合わせください。

最後にパデュー大学の根岸教授がおっしゃった一言をご紹介します。「若者よ海外に出よ!」海外に出ることで逆に日本が見えてくるということもおっしゃっていました。勇気をもって最初の一歩を踏み出してみませんか?

アメリカは職、イギリスは質:留学先決定の理由

アメリカの大学を取り巻く情報を知ることができる英文のウエブサイト ” Inside Higher Education” で「何が留学生を刺激するのか?」(What motivated international students?) と題する興味深い記事が掲載されていたので、今回はこの記事の内容をご紹介したいと思います。この記事は経済協力開発機構(OECD)がとった教育についての2010年の統計をもとに書かれているもので、世界中から集まる学生がどうやって留学する国を決めるのかということを分析しています。

留学先のトップ5の国々は、想像どおりアメリカ合衆国が1位、それにつぐ2位がイギリス、3位以下はドイツ、フランス、オーストラリアと続きます。興味深いのは、イギリスを留学先に選んだ学生の半数以上がその理由を教育の質を理由に挙げているのに対し、アメリカを留学先に選んだ学生のほぼ40パーセントはその理由として卒業後の就職の可能性を挙げていることです。日本人の間でも、イギリスの大学は名門、伝統というイメージがあるのではないでしょうか。アメリカでもたしかに名門校、有名校は数多く存在しますが、それ以上にアメリカを選ぶ学生は、将来アメリカでの就職も視野に入れ、それにはまずはアメリカの大学からということで渡米を決意するのでしょうか。近年留学生の就労条件が厳しくなっているアメリカではありますが、それでもアメリカに留学した学生でないと与えられない特権であるプラクティカルトーレーニング(在学中、卒業後など1年間限定の就労機会)からアメリカ就労ビザ獲得にこぎつけるケースもまだまだありますし、仕事イコールアメリカの構図は理解できます。

ちなみにオーストラリアやカナダを選択する学生はやはりワーキングホリデーを利用しての働きながら学ぶということを目的にしている場合が多いようです。またドイツを選ぶ学生の多くは授業料の安さをその理由にあげているのも面白いと思いました。ただし、近年の世界的不況で留学生の多くが資金の安さで留学する国を選ぶのかというイメージもありますが、そうではなく、やはり将来の可能性を一番に考え大学の質やキャリアアップの可能性で留学する国を選んでいるようです。たしかに留学するということは大きな結論になりますので、どの大学がどんな専攻を提供していて、そこで学ぶことが将来どのように希望する仕事(進路)に生かされていくのかということを優先に考えるべきだと私も思います。大学の授業料についてですが、一般に公表されている値段が確定された値段かといえばそうではないのです。実は大学によっては奨学金を留学生にもだしていたり、在学中にプラクティカルトレーニングを利用して一般企業で有給の研修をすることができたりして提示された金額よりも実際払う金額は少なくなるケースもあります。大学の調査をしっかり行うことでいろいろな可能性も見えてくるはずです。最近はアメリカの大学はあの手この手で学生獲得に向けて取り組んでいます。例えばある私立の大学では、新入生として入学した学生すべてにアップル社のiPad(アイパット)をプレゼントなんていうところもありました。重要なのは留学準備のプロセスでしっかりと希望大学の調査を行うこと。はじめたの場合は何からはじめてよいか分からないかもしれませんが、そんな時はU.S.カレッジコネクションにお気軽にご相談ください。それぞれの希望に沿いながら、皆さんにとって最良の選択になるようアドバイスさせていただきます。

参考文献:

Inside Higher Education, http://www.insidehighered.com/news/2010/09/30/foreign

アメリカのソーシャル・セキュリティー・ナンバー (SSN)

SSN
ソーシャル・セキュリティー・ナンバー(SSN)カード

今日はアメリカ生活では非常に重要なソーシャセキュリティーナンバーについてお話します。よくソーシャルセキュリティーナンバーは略して、エス・エス・エヌ(SSN)と呼ばれます。9桁の番号と言ってしまえばそれまでですが、アメリカで生まれ、そして労働する人々にとってはこのSSNが大きな意味を持ちます。アメリカで合法的に就労している人々はSSNがなければ賃金を得ることはできません。SSNは一人一人が異なる番号を持っており、この番号によって国税や州税の支払い義務のデータ入力、さらには厚生年金の支払いの帳簿もSSNによってデータ入力されているためです。SSNは各都市のソーシャルセキュリティーオフィスにて入手の申し込みをすることができます。F-1やJ-1ビザで一時的にアメリカに滞在している外国人にとってSSNは労働するときにのみ必ず必要になりますが、労働以外の理由でSSNの発行はできません。その証拠に留学生として一時的にアメリカに滞在している人のSSNカードにはValid for Employment Only(労働にのみ有効)というひとことが付け加えられているはずです。とは言っても一人一人が異なる番号のSSNは個人を見分けるID番号がわりに使われる場合も多くあり、SSNを持たない人々は不便な経験をするかもしれません。アパートを借りる、銀行口座を開設する、携帯電話を購入するなどさまざまな場面でSSNを聞かれることも多いと思います。ただし留学生対応で、SSNがなくとも銀行口座開設ができたり、自動車免許の申し込みや携帯電話の購入も可能になっています。また近年このSSN番号を非合法に入手し犯罪に使う悪質なケースも増えており、SSN番号を提示しなければならない状況は少なくなりました。ちなみに、SSNは皆それぞれ違った番号のため、誰かのSSNを入手することでその人の個人情報、金融情報なども盗むことが可能なわけです。もし労働のためにSSNを入手することが出来た場合には、以下のことに気をつけてください。

1.SSNは安易に電話やメールなどで教えない。

2.メールでSSN番号を聞く業者や会社は絶対に信用しない。

3.SSNは普段は持ち歩かず、安全な場所に保管する。

持っていれば確かに便利なSSNではありますが、取り扱いには細心の注意が必要です。

アメリカ出入国カードI-94:失くしていけない紙切れ

アメリカ出入国カードフォームI-94と言ってもピンとこないかもしれませんが、アメリカに向かう飛行機の中で渡される長方形の白い紙といえばお分かりでしょうか。ご自身のお名前とか滞在中のアドレスとか書くものです。このフォームI-94はもともとは長方形の紙ですが、アメリカに降り立ったところの入国審査で、入国用の情報フォームは切り取られて、皆さんには残りの正方形の切れ端が渡されるはずです。イメージ的にはまるで映画のチケットのように、いったんアメリカに入国してしまったら、I-94の切れ端はあまり重要ではなさそうですが、イメージとは違って実は皆さんのアメリカ滞在中の身分を証明するとても重要な紙切れなのです。

アリゾナ州政府が今年4月に不法移民取締りのために打ち出した新法では州内の移民が自身の身分を示す身分証明書を携帯していない場合にそれだけで刑法違反となり、また警察や空港カウンターなどに不法滞在に見える人々に身分証明書提示を求める権威を与えたこともがアメリカ国内どころか世界中のニュースになったのは記憶に新しいところです。これによりちょっと英語にアクセントがある人々も、町で警察官などからアメリカ人、あるいは合法的に滞在している外国人の証明を求められることもあり、もし何の証明も出来ない場合には刑務所に収容などということもありえたわけです。ただし後にこの法律はアメリカ連邦地裁より主要な条項の施行を差し止める命ずる判決が下されました。

I-94カード
I-94カード

アリゾナ州の新移民法が施行差し止めにはなったものの、この出来事をきっかけに留学生の受け入れに関わる担当者たちの間で「留学生たちの身分を正式に証明する書類」についてもう一度考え直すきっかけになったのも事実です。移民法には「学生や研究者、就労などの目的でアメリカに非移民として一時的に滞在している人々はその身分を示す書類を携帯していること」が記載されています。身分を示す書類の例として明記されているのがI-94カードなのです。I-94にはそれぞれが違う番号のアドミッションナンバーが記載されており、FやJなど学生の身分で滞在している場合にはこの番号がSEVISデーターベースにも入力されます。また同様にFやJの身分で入国した皆さんのI-94カードにはなにやら不思議なD/Sというマークが手書きで記入されているはずです。D/SとはDuration of Statusの略で皆さんのFやJとしての身分が学業が終了するDuration(期間)まで有効であるという意味です。なんらかの理由により修了する日にちが遅れたり、逆に早まることもあるので、身分が切れる日にちが明記されることなくD/Sのみが記載されているのが特徴です。このI-94カードはアメリカを出国する日まで保持する必要があり、一時アメリカを出国するときには出国する空港でI-94が取り外されます。そして再入国するときには新たにI-94カードを受け取ることになります。

アメリカで学生受け入れを担当する関係者の間ではこれまではパスポートやI-94カードなどあまりに重要な書類はオリジナルを持ち歩くことなくコピー持参でアメリカ国内は十分というアドバイスがこれまで主要でしたが、アリゾナの出来事をきっかけに、移民法に正確に沿うためには「最低でもI-94カードはオリジナルで携帯すること」という認識に変わったのが今年の流れでしょうか。ただし上記したとおり、I-94は重要な書類でもありますので失くさないように気をつけてください。失くした場合にはアメリカ国内から新たにI-94の再発行を申し込むことも可能ですが、手数料として今現在では300ドルが必要です。高いです。

I-94は重要な紙切れです。普段はパスポートにホチキスでとめておき、パスポートごと持ち歩くか、それが不安な場合にはI-94のみを取り外してカードケースなどに入れて携帯するなどの工夫をしてみてください。

留学座談会のゲストスピーカーとして招待されました

アメリカ留学、短期滞在サポートのU.S.カレッジコネクション代表である今入亜希子が10月16日に開催される岩手県国際交流協会主催の「海外留学座談会」のゲストスピーカーとして招待されました。当日はアメリカの大学でアドミッションカウンセラーやインターナショナルオフィスのアシスタントディレクターの立場として長く海外の留学生サポートにあたった経験から、留学を希望する参加者の皆さんと座談会形式の交流を行います。岩手県にお住まいの方はぜひともご参加ください。この海外留学座談会は10月16日、土曜日の午後3時から5時まで、盛岡市西通りのアイーナ6階団体活動室1で開催です。事前の予約が必要です。お問い合わせは岩手県国際交流協会、電話019-654-8900までどうぞ。また交流協会のウエブサイトはhttp://www.iwate-ia.or.jp/

U.S.カレッジコネクションの代表、今入亜希子は9月の末から10月末にかけて日本に滞在しております。この機会に電話にて直接カウンセリングやお問い合わせを希望される方は、USCCにご予約ください。

USCC のホームページが完成しました!

U.S.カレッジコネクション(USCC) のホームページが完成しました。アメリカ最新情報(ブログ)ではアメリカ移民法上で特筆するべき変化やアメリカ生活の気になる情報を随時アップデートしていきます。アメリカ大学のインターナショナルオフィスで留学生のサポートに関わり、F-1やJ-1ビザを取り巻く移民法に精通したエキスパートならではの詳しい情報、そしてアメリカに拠点を置くUSCCだからわかるアメリカ生活者の視点からのアメリカ情報にご期待ください。