今回は、具体的な大学の入学基準と大学体育協会(ここではNCAA)の競技資格の基準をご紹介します。大学の入学基準は学校ごとに異なりますが、ほとんどの大学で共通しているのが、高校時代の成績とSATまたはACTと呼ばれる学力試験のスコアです。
■アメリカの大学でスポーツをするために必要な基準
一例として、フロリダ州のディビジョン1に所属する州立大学が出している入学基準を見てみましょう。大学は明確な基準は公表しませんが、2011年度に入学した1年生の50パーセントは以下のような成績としています。
- GPAが3.6~4.2で、ACTコンポジットが25~29もしくはSAT合計(英語のリーディングとライティングおよび数学)が1730~1960。
- 高校時代の取得単位: 英語4年間(最低3年間のライティングクラスを含む)、数学4年間(代数学以上)、自然科学3年間(最低2単位の実験実習を含む)、社会科学3年間、外国語2年間、選択教科2年間(英語、数学、自然科学、社会科学、外国語のクラスが望ましい)
- ACTまたはSATのスコアの最低点: ライティング:ACTで21点もしくはSATで500点; 数学:ACTで21点もしくはSATで500点; リーディング:ACTで22点もしくはSATで500点
次に、NCAAが定めている学業成績の基準をみてみましょう。ディビジョン1とディビジョン2では必須科目の取得単位の要件が異なったり、GPAとACT/SATのスコアにおける傾斜方式の計算方法の有無などがあります。
ディビジョン1では、高校生アスリートに対して以下のような基準を定めています。
コア・コースの修了
4年間の英語、3年間の数学(代数1以上)、2年間の自然科学、1年間の更なる英語・数学・自然科学のいずれか、2年間の社会科学、4年間の選択科目(上記分野もしくは外国語、宗教学、哲学のいずれか)
GPAとSAT/ACTの傾斜式計算法
コア・コースの科目の成績を数値換算してGPAを算出し、その結果によって求められるSAT/ACTスコアが変動します。たとえばGPAが3.5以上の場合、SAT(英語リーディングと数学)は400点、ACTは37点となります。しかし、GPAが3.0の場合、SATで620点、ACTで52点が要求されます。
ディビジョン2では、以下のような基準となります。
コア・コースの修了
3年間の英語、2年間の数学(代数1以上)、2年間の自然科学、2年間の更なる英語・数学・自然科学のいずれか、2年間の社会科学、3年間の選択科目(上記分野もしくは外国語、宗教学、哲学のいずれか)
SAT/ACTのスコア基準
SATは820(英語リーディングと数学)、ACTは68点
日本の高校を卒業してからアメリカに留学する場合に気をつけなくてはならないのが、NCAAの審査はアメリカの高校(9年生から12年生)、日本では中学3年から高校3年となる点で、日本の中学・高校の成績をアメリカのGPA算出方法に変換して提出することになります。
■高校留学と大学留学の違い
日本からアメリカにスポーツ留学する時期ですが、最近ではアメリカの高校に留学して将来の大学スポーツ奨学金を目指すケースも増えてきているようです。高校からアメリカに留学すると、英語がより早く身につくでしょうし、生活や学校のシステムも理解でき、自分のパフォーマンスを大学コーチにアピールしたり学校を探すための情報集めやコネクション作りにも十分な時間ができるでしょう。フルタイムでスポーツアカデミーに所属しながら、近くの、あるいはスポーツアカデミーが経営する高校に通うケースが留学生の間に広がっております。このようなスポーツアカデミーは、独自にアカデミックコーディネーターを置き、学業もしっかり有名大学進学レベルに至れるよう指導します。ただし、料金的な問題がありますので、しっかりと事前の調査が必要となります。また、コミュニティカレッジと呼ばれる短大にまずは進学し、スポーツ奨学金のオファーを受けて4年制大学に編入するという選択もあります。
いずれにしても、少しでも早くから色々な情報を集めたり調べたりして大学コーチたちにコンタクトをとる手段を見つけ出すことが、奨学金取得の可能性を高めることは間違いありません。
■アメリカにスポーツ留学する際は「The sooner, the better」を忘れずに!
あなたが高校時代までにスポーツで活躍し、大学コーチからスポーツ奨学金のオファーをもらえたとします。その場合、大学アカデミック・オフィスとコンプライアンス・オフィス(NCAAの大学窓口)の成績の基準を満たしていなくては、どんなに優秀なアスリートでも結局奨学金を逃してしまうことになりかねません。そのための準備として、スポーツ活動はもちろん、中学・高校時代の日々の学業を怠らないことがとても大切になります。そしてSATやACTも、しっかりと計画を立てて効率的な勉強方法を探し出すことが大切です。日本人の場合、TOEFLも同様に長期的な攻略プランを立てる必要があります。
アメリカでスポーツ奨学金を目指している若いアスリートたちは、スポーツはもちろん、勉強や社会活動なども一生懸命に取り組みます。大学からは、スポーツのみならず総合的に優秀な人材が評価され求められるためです。
アメリカへのスポーツ留学を希望するみなさん自身、そして保護者のみなさんも、アメリカのスポーツ留学は「文武両道」であることを忘れず、より早く計画的に準備することが良い結果に繋がるということを覚えておいてください。