The sooner, the better ~アメリカの高校・大学へスポーツ留学をお考えの皆様へ①

ここ数年、世界的にアマチュアスポーツ界のグローバル化が進み、スポーツ奨学金を得てアメリカの大学に留学したり、将来のスポーツ奨学金を目指してアメリカの高校に留学する若いアスリートが増えています。その背景には、アメリカでは学生アスリートがスポーツ奨学金を得ながら学位を取得するためのサポートシステムが定着しているが、ヨーロッパやアジアではアメリカのようなシステムが整っていないといういう実情があります。

今回は、アメリカにスポーツ留学したいというアスリートや保護者の皆様に、アメリカのスポーツ留学に必要な情報をご紹介し、より計画的で具体的な留学準備に役立てていただければと思います。英語ではThe sooner, the better 「早ければ早いほど良い」という言葉がありますが、スポーツ留学の準備は正しい知識をもって、早いうちに始めることが大切です。

■アメリカ教育機関にスポーツ留学する

アメリカにスポーツ留学する際に念頭においていただきたいことがふたつあります。一つ目は「文武両道」が求められるということです。ヨーロッパやアジアでは、若くて能力の高いアスリートはエリートプログラムなどに所属してひたすら競技のトレーニングに明け暮れます。年代が上がるにつれて、ふるいにかけられて人数が絞られていき、最終的にエリートの中のエリートだけがトップレベルで競技を続けていける環境です。アメリカでもそのような競争原理は存在しますが、もっと受け皿が広く、アスリートたちはより多様な選択肢を持つことができます。特に大学アスリートたちはプロやオリンピックなどの世界大会を目指している場合もありますが、ビジネスや教育、あるいはスポーツの指導者など、必ずしも競技者としての頂点がゴールとは限りません。多くの大学アスリートたちはしっかりした将来設計と目的意識を持って大学生活を送り、スポーツ奨学金制度やサポートシステムをフル活用し、将来の充実したキャリアの実現を目指しています。

大学のスポーツ奨学金制度を得るメリットは様々で、まず学費を免除や割引のオファーがあります。そして、大学の学生アスリート専用のコートやトレーニング・ルームで専属のコーチやトレーナーの下で指導を受けることができます。さらに、学業面でもアカデミック・アドバイザーや家庭教師が、授業の補習や試験の準備などをサポートしてくれます。アパートや食事のほか、教科書などを提供してくれるプログラムもあります。

■スポーツ留学に際して知っておくべきこと

スポーツ奨学金のオファーを受けるプロセスで一番多いのが、大学のコーチが個人のネットワークや大会の視察で優秀な選手を見つけ、コンタクトをとる方法です。そして学校やチームの紹介、実際の学校訪問を経て、奨学金や待遇を提示されます。選手個人が過去の大会や練習のビデオを直接コーチに送ってコンタクトをとるケースもあります。

アメリカの大学に入学してスポーツ活動を行うには、ふたつの基準を満たさなくてはいけません。まず、大学の入学許可を得ること。アドミッション・オフィスと呼ばれる入学関連の手続きを扱う部署の担当になりますが、これは大学の全新入生が対象で、大学が定めた高校時代の成績(GPAと呼ばれる)や全国統一の試験(SATやACTと呼ばれる)のスコアを満たさなくてははなりません。また、英語圏出身以外の留学生にはTOEFLやIELTSという英語力の試験も課されます。

そしてもうひとつが、大学アスリートの競技資格を審査する大学体育協会(NCAAなど)の基準です。通常、大学のアスレティック・デパートメント(体育会)のコンプライアンス・オフィスが管轄していますが、高校時代の各教科の成績とSATまたはACTのスコアが協会の基準を満たしていないと、大学での競技資格を出してくれません。大学の入学基準がNCAAの基準より低い場合は大学に入学すること自体は可能ですが、NCAAの基準をクリアしない限りチームに所属して活動することはできず、スポーツ奨学金も給付されません。この場合、大学で一年間勉強してNCAAの基準をクリアしなくてはならないので、ブランクによる競技レベルの低下やモチベーション維持など様々な面で大変になるでしょう。

コーチたちは自分の欲しい選手を入学させるために、大学入学に必要な準備を手伝ってくれますが、NCAAの厳格な規定はどうすることもできないので、学生本人が学業面で良い成績や点数を出すしかないのです。

スポーツで良い結果を出していれば、大学スポーツからのスカウトを受けられて大学に入学できるという考えは正しくありません。大学アスリートになるためにはNCAAの成績基準に合致してはじめて、奨学金も得られて競技ができるのです。大学アスリートは、アスリートである前に大学生であるということ。学業もおろそかにせず、高校までの成績もしっかりしていることが重要なのです。

次回は、大学の入学基準やNCAAなどの体育協会が定めている競技資格の基準を具体的な数値と共にご紹介します。